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梅雨の余韻が残る6月12日~19日、

伊計島で「珊瑚の島のアートプロジェクト」が開催されました。

台湾から訪れた大学生をはじめ、アーティスト10名が数日間島で過ごし、

「珊瑚」を主なテーマにした絵画、空間アート、

木工工芸などの作品9点を作り上げ、集落内に展示。

アートを通じて島の人たちと交流を持つことを目的としたイベントです。

このアートイベントを企画・主催したのは

国立台湾芸術大学研究生の町田佳子さん。

一昨年、うるま市の島しょ地域で行なわれた

「イチハナリアートプロジェクト」のスタッフとして初めて伊計島に1カ月間滞在し、

島の人たちとの交流にとても感動したと話します。

その後、台湾に留学し、

「伊計島と台湾を結ぶ活動をしたい」と考えるようになりました。

距離も近く、文化も似ている“沖縄と台湾”。

ふたつを繋げている“海”から連想したテーマが『珊瑚』でした。

作品の展示場所探しや自治会への協力依頼、学生たちのホームステイ先との交渉など、

島に住んでいる知人のサポートを経て、イベント実現に至ります。

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島の人が日用品を買い求める共同売店も作品の展示会場になりました。

商品棚のそばには、可愛い木彫りのアートがありました。

魚と珊瑚を融合した作品「Coral Fish(珊瑚魚)」。

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「魚と珊瑚は同じ海の生き物。だから、ひとつになっても違和感がない」と、

話すのは木工彫刻アーティストのムーア・タンさん。

「(出身地の)マレーシアでは、お父さんが漁師だったこともあり、

家族でよく魚を食べていました。魚は家族との大切な思い出です」とタンさん。

彼女が作る魚は、自分自身と重ねたもの。

どことなく、Coral Fishの顔もタンさんの表情と似た雰囲気。

滞在中は、島の人たちと寝食を共にし、島の暮らしも体験。

台湾では作品を工房の中で作り、画廊などで展示していますが、

今回のイベントでは、

伊計島の自然の中でのびのびと制作し、島の意外な場所で展示。

島でのゆったりとした制作は、充実感に満ちており、

「また島を訪れて、創作したい!」と、笑顔を見せます。

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別の古民家では、台湾人の陳さんが

島の人たちに「珊瑚の思い出」をインタビューした動画を上映。

“大きな珊瑚を家族で探しに行った”

“昔はカルシウムを取るため珊瑚を砕いて食べたこともあった”など

島に住む子供から大人たちのさまざまな思い出が語られました。

その上映と一緒に提供されたのが、

台湾ではメジャーな「バブルティー」(紅茶やジュースにタピオカが入ったもの)を

沖縄風にアレンジした「珊瑚茶」。

「珊瑚茶」の中にはタピオカの代わりに、

伊計島産の黄金芋、宮城島の塩「ぬちまーす」、県産の紅イモを使用したお団子が入っています。

使用する食材を島のおばぁにアドバイスを受け、手作りしたそうです。

「伊計島は、海が綺麗で素晴らしい場所。

台湾に戻ったら、島の人たちの珊瑚の思い出の動画を編集し、

台湾でも伊計島のことを紹介したい」と、話します。

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N高等学校(旧伊計小中学校)の教室では、

沖縄の子どもたちが、沖縄の海を色鮮やかに表現した紙芝居も展示されていました。

アートプロジェクトを通して生まれた台湾の学生と島の人たちとの交流は、

島に新たな力を生むきっかけにもなりました。

 

たとえば、ハーリー船の櫂(オール)作りの手伝いをした学生らに、

島の人がハーリー大会で着るTシャツのデザインを依頼。

Tシャツには、ホームステイ先でお世話になった

おじさんの顔のイラストがデザインされました。

さらに、伊計島のおじぃ2名は彼らとの再会を待ちきれず、

人生初のパスポートを取得して台湾まで旅をするほどに。

「作品を展示するというアートイベントではなく、

台湾の人と島の人との交流が生まれるようなイベントとして

今後も活動を続けたい」と、意気込みをみせる町田さん。

珊瑚、アートをきっかけに始まった台湾と伊計島との繋がりは、

今後も、さまざまな物語を生み続けていくことでしょう。

伊計島と台湾がアートと人で繋がる「珊瑚の島のアートプロジェクト」

「珊瑚の島のアートプロジェクト」

所在地/沖縄県うるま市与那城伊計

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掲載日 2016年7月22日

※ハーリーとは、旧暦の5月ごろに豊漁や航海の無事を願って行われる沖縄の祭り。

サバニと呼ばれる伝統漁船を使った対抗レースが県内各地で繰り広げられる。